年収の壁攻防

年収の壁178万円へ引き上げ 中間層3万円減税が不動産市場に与える影響とは

2025年度税制改正により、所得税が発生する「年収の壁」**が178万円へ引き上げられることが決まりました。 基礎控除の増額により、年収200万円台から中間層、さらには高所得層に至るまで、幅広い層が減税の恩恵を受ける見込みです。 特に注目されているのが、 年収500万〜600万円の中間層で約3万円前後の減税となる点です。 一見すると「小さな金額」に見えるかもしれませんが、不動産取引の現場では、この変化が住宅購入・売却・賃貸市場にじわじわと影響を及ぼす可能性があります。

 

中間層減税は「可処分所得」を確実に押し上げる 今回の制度改正では、 年収500万円:▲約2万8,000円 年収600万円:▲約3万7,000円 年収200万円台でも負担軽減 と、幅広い層が対象になります。 これは、 住宅ローン控除のような“申請型の減税”ではなく、誰でも自動的に効く減税 である点が大きな特徴です。 結果として、家計の可処分所得が底上げされ、 住宅ローン返済への心理的余裕 賃料上昇への耐性 住宅購入検討のハードル低下 につながる可能性があります

 

。 3万円減税は「住宅購入の最後の一押し」になる 不動産購入は、多くの場合、 「買えるかどうか」よりも 「買っても大丈夫かどうか」 という心理で判断されます。 年間3万円の減税は、月換算すれば約2,500円。 しかし、 管理費・修繕積立金 固定資産税の月割り 火災保険料 といったランニングコストと比較すると、 「ちょっと余裕が出る」という実感を持つ人は少なくありません。 特に、 ✔ 共働き世帯 ✔ 子どもが中学生以下の世帯 ✔ 初めて住宅を購入する層 では、購入判断の後押しになるケースが増えるでしょう。

 

年収の壁引き上げは「人手不足」と「不動産需要」に波及 年収の壁が178万円に引き上がることで、 パート・アルバイトの就労時間増加 専業主婦(主夫)の労働参加 高齢者の就労継続 が期待されています。 これは単なる労働政策ではなく、 人口減少社会における住宅需要の下支え策でもあります。 働く人が増え、世帯収入が安定すれば、 賃貸住宅の安定需要 住宅ローン審査通過率の向上 空き家化リスクの低減 といった形で、不動産市場にもプラスに作用します。

 

専業主婦・高齢者の就労と住まいの選択 今後は、 フルタイム → パート 定年後の短時間就労 在宅ワーク併用 といった多様な働き方が広がります。 それに伴い、住宅選びも、 職住近接 コンパクト住宅 駅近・医療施設近接 といった要素が、これまで以上に重視されるでしょう。 不動産取引においては、 「年収」だけでなく「就労の持続性」を見据えた提案が重要になります。

 

減税時代こそ重要になる「不動産業者の役割」 減税=すぐに景気回復、という単純な話ではありません。 重要なのは、 減税効果をどう家計に落とし込むか 将来不安とどう向き合うか です。 不動産業者には、 無理のない住宅ローン設計 固定資産税・ランニングコストの見える化 ライフステージを見据えた住み替え提案 といった中長期視点のコンサルティング力が、これまで以上に求められます。

 

まとめ:3万円減税は「静かな不動産追い風」 今回の基礎控除増額による減税は、 派手さはないものの、 中間層の心理的余裕 労働参加の拡大 住宅需要の底支え という形で、不動産市場に静かな追い風をもたらします。 人口減少時代において、 高齢者・専業主婦・中間層をどう活かすかは、 不動産市場の持続性そのものに直結するテーマです。 目先の金利や価格だけでなく、 こうした制度変更をどう読み解くかが、 これからの不動産取引では重要になります。

2025年12月20日