地価暴落予兆
地価暴落のシナリオ:神戸市北区をケースに、何が“引き金”になり得るか
まずは足元のファクト 空き家の地場感 神戸市全体の空き家率は2018年時点で13.3%。区別でも把握されており、北区の空き家数は2018年で12,670戸でした。直近の2023年調査ベースでは、北区の空き家数は約14,010戸(空き家率13.53%)との推計も出ており、郊外での空き家蓄積が続いています。 兵庫県の空き家率は2023年で13.8%、空き家総数は約38.7万戸と過去最高水準。ストック過剰が背景にあります。
人口動態 神戸市は中長期で人口減少に転じており、2025年1月1日現在の市人口は約149.1万人。2024年の1年で北区は約1,956人減と、外縁部の減少が目立ちます。
価格指標の“ねじれ 2025年公示地価で北区(住宅地)は前年比+2.5%と小幅上昇。一方で成約・掲載事例の平均価格は直近1年で▲19.3%の指標もあり、公示地価(評価)とマーケット実勢(成約)がズレる局面が見られます。相場が弱含むと、この乖離が縮小する方向(=成約側の下方調整)に寄る可能性があります。
金利環境の変化 日銀は2024年7月に政策金利を約0.25%へ、2025年1月に0.5%へと段階的に引き上げました。今後の追加利上げ観測(1%への検討があり得るとの報道ベースの言及)もあり、金利上昇局面にあります。長期固定の指標である【フラット35】は2025年8月時点で21–35年の最頻金利1.87%。金利感応度は高まっています。
暴落が“起こり得る”メカニズム(5本柱)
金利ショック 金利がもう一段上がると可処分所得の制約が強まり、一次取得層(初めて家を買う層)の購買余力が急低下。たとえば3,000万円・35年・変動0.7%の月返済は約8.1万円ですが、1.2%で約8.8万円、1.7%で約9.5万円へ。+0.5%ptで毎月約7千円、+1.0%ptで約1.4万円の負担増イメージです(概算)。メガバンクの変動相場は0.7%前後との実務感にも沿います。
需要母数の縮小(人口・世帯構造) 北区は長期で人口減が進行。高齢化・単身化で「買い手になりにくい世帯」の比率が上がり、需要裾野が痩せると価格の下押し圧力がじわじわ効いてきます。
空き家ストックの放出圧力 相続発生→維持困難→売却(あるいは賃貸化)という流れが加速すると、築古・郊外の供給が増えやすい。県全体で空き家が積み増し傾向にあることは、将来の“放出弾”が多いことを意味します。
一次取得層のアフォーダビリティ悪化 金利と物価の同時上昇局面では、手取りの実感がつきにくく、審査金利・返済比率のハードルも意識されます。固定金利(フラット35)のじり高は、金利リスク回避ニーズを削ぐ方向に働き、需要が細る要因。
指標の乖離解消 評価系(公示)と取引系(成約)のギャップは、需給が弱くなると“価格の下方均衡”に収斂しやすい。実勢が弱ると、売出価格の修正が連鎖しやすくなります。
想定シナリオ(12〜36か月)
A. ソフトランディング 前提:金利は0.5〜0.75%帯で一服、家計所得は横ばい。 帰結:北区の実勢価格は年▲5〜▲10%程度で小幅調整、売れる物件と売れない物件の二極化が進む。
B. 金利再上昇+需要後退 前提:政策金利が1%近辺まで引き上げられる観測が現実味。長期金利高止まり。 帰結:成約価格は属性差拡大(築古・バス便・車依存立地は▲10〜▲20%、人気エリアは耐性)。在庫滞留と売出価格の段階的切下げが常態化。
C. 複合ショック 前提:税制・補助制度の見直しや相続放出の集中、災害リスク顕在化などが同時発生。 帰結:一定期間、流動性が低下し、指値が通りやすい環境に。築古・空き家系は▲20〜▲30%のディスカウントが散見される可能性。 ※上記は“可能性の整理”であり、確定的な予測ではありません。価格は個別事情・需給で大きく異なります。
北区で影響を受けやすいストック像 旧ニュータウン系の戸建(築30年以上・車依存・坂/バス便) EVなし中層団地、給排水・断熱更新未実施の大型団地 相続発生が多いエリアの空き家(管理難・解体コスト負担が重い)
売主・オーナーの実務アクション(今からできること) 物件ポジショニングの“棚卸し” 「立地×築年×利便×維持費」で相対評価。周辺の成約レンジと賃料レンジの両にらみで“二刀流”出口(売却/賃貸)を検討。
金利感応度の見える化 想定買い手の家計目線で、0.5%ptごとの月返済と返済比率(年収比)を試算。販売図面に「金利別 月返済表」を付けると内覧の刺さりが違います。固定の指標(フラット35)は足元1.87%が目安。
“評価→売出→成約”の三段ロジックを数値で管理。乖離が大きい場合は初動で適正レンジに寄せ、在庫日数(Days on Market)を抑えるのが下落局面の鉄則。
空き家のコスト最適化 解体補助(老朽空家等解体補助)や活用補助(空き家活用支援事業)を確認。更地化・軽微改修・用途転換の三択でROI比較を。神戸市は2025年に解体補助の交付要件・上限を見直しています。
買い手ターゲットの再設計 一次取得層に限定せず、賃貸投資家・二地域居住層・リノベ志向層にフィットする提案(固定費の見通し、断熱改修案、車利用の実務情報等)を用意。
まとめ:暴落は“トリガー×ストック”のかけ算
トリガー(外生的):金利上昇・税制/制度変更・金融環境の変化
ストック(内生的):空き家蓄積・人口動態・築古比率・立地条件 北区は「空き家ストック多め×人口減少」で感応度が高いエリアです。足元では公示地価が堅調な地点もありますが、実勢の弱さが続くと評価とのギャップは解消方向(=価格調整)に寄りやすい。
売主サイドは“先に動く”こと自体が武器になります。まずは(1)客観データの確認、(2)金利前提の見える化、(3)補助制度の活用可否――この3点から着手するのが、下落局面での王道対応です。
この先3年の間に、個人の感想では有りますがとんでもないシナリオが待ち受けていると想定しています。